仮想の書斎

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読書記録01:姑獲鳥の夏

京極夏彦姑獲鳥の夏講談社文庫,1998年

あらすじ

 

 民俗学とミステリーが融合した小説。舞台は第二次世界大戦後の日本。古本屋の主人「京極堂」こと中禅寺秋彦が、久遠寺医院で頻発する怪事件を憑き物落としにより解決する話である。

 

 「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」

 

 

姑獲鳥の夏』に関するあれこれ

 民俗学の枠組みの中で書かれた推理小説である「百鬼夜行シリーズ」の第一作目。京極夏彦氏が本作『姑獲鳥の夏』の原稿を講談社に持ち込んだことが、後のメフィスト賞創設につながる。

 

 氏の著作はそのページ数からレンガ本とも呼ばれる。初めて手に取る際は、その分厚さに威圧されるが、文章がページを跨がないというユーザビリティを考慮した特徴もあって、思いの他すらすらと読み進めることができる。

 

 加えて本作は約600頁と、続編に比べ頁数は少なめである為、比較的手に取りやすいのではないだろうか。

 

 また、本書には古本屋の主人である「京極堂」を始め、小説家の関口巽、「薔薇十字探偵社」の私立探偵、榎木津礼二郎。刑事の木場修太郎。等、まるで漫画のキャラクターのような個性を持った魅力的な登場人物が多数存在する。そのような点からも、一度読み始めたらはまること間違いなしと言えるだろう。

 

 ちなみに、シリーズ通して作品に冠せられている妖怪が作中に実体として登場することはない。

 

感想※若干のネタばれあり

 

 トリック自体は、信頼できない語り手による叙述トリックというシンプルなもの。京極堂の憑き物落としによって、真相が明かされる。

 

 出版からかなりの年数が経っているので、もしかしたらおおよそのトリック自体は読んでいる途中で気付いてしまうかもしれない。

 

 だが、本書の注目すべき点はそこではなく、氏の卓越した妖怪や宗教その他諸々に関する蘊蓄であると私は思う。ここを面白いと思うか、くどくて読みづらいと思うか、それによって、本書に対する評価は百八十度変わるのではないだろうか。